DOROZOME -肥後染色-
残暑の厳しい9月の下旬、
筆者とweb担当の2人は奄美大島へと向かいました。
しばらくぶりになってしまった泥染めの肥後染色さんへ改めてご挨拶と、
泥染めの依頼と体験、そして思いがけず、
奄美大島・群島の雄大さや偉大さを再認識する旅となりました。
成田空港から直行便で奄美空港へ、
そして予約していたレンタカーを借りて
30分ほど移動すれば肥後染色へ到着です。


筆者が初めて訪問した7-8年前と比べても
外観は大きくは変わらず、
かすかな懐かしさと共にご挨拶。



芝のまるは最近のニューメンバーだそう。
遊んでくれるとわかったら離してくれません。

お昼をとって工場に戻って、
依頼もそこそこにして
すぐに自分たちの手で染めの体験をさせて頂きました。



泥染めといっても単に泥に入れれば染まるわけはなく、
まずは方言で「テーチ木」と呼ばれる
シャリンバイ(車輪梅)の木の煎液を作るとこから始まります。


肥後染色では容量600kg近い窯に
粉砕・チップ化したテーチ木を煮出し、
その後は時間をかけて発酵させていきます。

ミルキーな赤色の煎液に製品を浸け、
揉みこむ工程が始まります。
その回数は製品によりますが4-6回ほど。
浸して揉みこんでしっかり絞る、これを手作業で。
文字で書けば造作もないことですが、
すでに1時間以上、作業を続けます。
この時点で染まりの具合を見て、
ようやく泥田に製品を通します。
全体に泥の粒子が纏うように、
拡げたり揉みこんだり…。
それまで紅葉のような赤色だった製品は
瞬く間に深い深い茶色へ、
褐色がかった黒へと変わっていくのです。
テーチ木に含まれるタンニンと、
泥に含まれる鉄分の反応、
島内でも都内でも、
何度か体験をしている筆者にとっても、
手元で大きく変わる色を見ていると、
毎回不思議に思います。


この行程を2回繰り返し、
深い黒色のフィルメランジェの泥染めが完成します。


今回お願いした泥染めのアイテム群、
半袖Tシャツからスウェットパーカまで幅広く少量ずつ、
染めて頂きました。
ここまで書き記した工程を知っていても知らなくても、
アイテムの持つ魅力だけで純粋に
手に取りたくなる素敵な仕上がりです。
すこし固い仕上がりのアイテムを着込み、
洗い、少しずつ柔らかくなりながら日焼け、
退色をしていくさまが本当にかっこよく映える染め、アイテムたちです。
12月19日(金)12時より販売開始




「奄美に来たからには自然も楽しんでいってくれ」と
肥後染色の代表である山元さんの言葉。
泥染めだけが奄美大島ではなく、
明らかに本島とは違う植物たちや、
天然記念物に指定される動物たち、
そしてどこまでもきれいな海…。
わずかな時間を利用して奄美大島博物館で歴史を学んだり、
本来の泥染めの源流である大島紬の制作過程を学んだり、
感動すら憶える海を眺めたり…。
夜は宇検村まで出向いてシギやクロウサギ、ハブを見たりと、
パンパンに詰めたスケジュールで奄美大島を大いに楽しみました。
行ったことがない方のほうが大半かと思いますが、
ぜひ一度、スケジュールを取って奄美へ向かってみてください。
人生観すら変わる自然や体験が沢山あります。
今回2回目の訪問の筆者でさえ、
奄美群島まだまだ行きたい場所が増えてしまいました。
日本は狭いようで広いなと感じます。
学びと感動が詰まった肥後染色さんへの訪問旅でした。


